「過去のつらい出来事は変えられない」
そんなふうに思っている方も多いかもしれません。
たしかに、出来事そのものをなかったことにすることはできません。
でも実は、「その記憶に結びついた感情」や「意味づけ」は、今の体験によって変わっていくことがあるんです。
今日は、そんな“記憶の書きかえ”について、やさしくお話ししてみたいと思います。
記憶は、思い出すたびに少しずつ変わる
私たちの脳は、記憶を「固定されたまま保存している」と思いがちですが、
実は、思い出すたびに再構成(再編集)しているといわれています。
つまり、記憶は思い出された瞬間に“やわらかく”なり、
そのときの感情や状況によって、少しずつ変化することがあるのです。
これを、神経科学では「再固定化(Reconsolidation)」とも呼びます。
トラウマ記憶がやわらぐとき
たとえば、過去に怖い体験をしたとき。
そのとき「私は無力だった」「誰も助けてくれなかった」と感じていたとします。
でも、時間がたってから、
安心できる人と一緒にその体験をふり返ったとき、
「怖かったけど、生きのびた私がいた」
「今の私は、ちゃんと助けを求められる」
そんなふうに、その記憶にくっついていた意味が変わっていくことがあります。
このプロセスが、まさに「記憶の書きかえ」です。
書きかえられるのは「出来事」ではなく「印象」
もちろん、過去の出来事そのものが消えるわけではありません。
でも、「思い出すたびに胸が締めつけられる」ような苦しい感覚が、
「今の私が、その時の私を抱きしめてあげたくなる」ような感覚に変わることはあります。
これは、記憶の中の「感情の温度」がやわらかくなるということ。
過去への見方が、今の自分との関係の中で、少しずつ変化していくんです。
カウンセリングやセラピーで起こること
カウンセリングやセラピーの場では、
こうした“記憶の書きかえ”が自然に起きていくことがあります。
それは、無理に思い出させたり、分析したりするのではなく、
安全で安心できる関係の中で、
少しずつ「感じなおす」ことができるからです。
体の感覚を通して、
心の奥に閉じ込めていた感情に気づいたり、
過去の自分に今の自分が寄り添ったり。
そんな体験が、「過去の印象」をゆっくりと変えていく手助けになります
過去は変えられなくても、未来は変わっていく
たとえつらい過去があっても、
その記憶が“今のあなた”を苦しめ続ける必要はありません。
あなたがこれから出会う体験や、
心と体が安心できる場所が、
少しずつ記憶をやわらかくしてくれるかもしれません。
過去は変えられない。
けれど、その意味や印象は、
今の体験によって書きかえていくことができるんです。
あなたがこれから出会う体験や、
心と体が安心できる場所が、
少しずつ記憶をやわらかくしてくれるかもしれません。
これでは今日も一日、心も体も笑顔でお過ごしください。
カウンセリングオフィスSORA
杉山つぐみ
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